きらりと光る、奈義の植物たち ①那岐山に好かれたい!

はじめまして! 2017年から、奈義町役場前王将跡地の「みんなの庭」プロジェクトに参加している造園家の佐々木知幸と申します。いろんな場所で野草を使って庭を作ったり、一般の方向けに自然観察会を開いたりする仕事をしています。今回、はじめて奈義にお邪魔して、植物がとても豊かなことにすっかり魅了されてしまいました。これからたまに、奈義の植物にまつわるレポートを投稿させていただきます。もちろん、町内には植物にお詳しい方もいらっしゃいますが、僭越ながらヨソ者の目で見た奈義の魅力を発信できればと思います。どうぞよろしくお願いします。

去年、何回か奈義に来て、町内あちこちにお邪魔しました。そこで目を引いた奈義の景色の特色は・・・

・広々とした田んぼ

・ため池

・点々とある神社やお寺の森

・広戸風から家を守る生垣「コセ」

などでした。でも、これらを全部ひっくるめて見守っている大きな大きな存在は、やっぱり那岐山ですよね。ところが残念なことに、僕が来る時に限ってなのか、いつもなのか、那岐山はいつも雲の中に隠れて全体を見せてくれませんでした。もしかして、那岐山に嫌われてる!? と、ちょっと心配になってきました。まるで舞台の幕みたいに白く降りている雲というか霧… 那岐山に好かれて、霧が晴れる日は来るのでしょうか…

霧に煙る那岐山

ころで、奈義の田んぼのあぜ道を歩いていて、気がついたことがありました。やたらにコケが多いのです。奈義の土は、関東人の僕にとってはなじみ深い赤土の上に黒ボク土が載った2層構造。それなのに、あぜ道の雰囲気がぜんぜん違う!とびっくりしました。野草の種類も桁違いに豊富です。

苔むしたあぜ道に生えるミミナグサ

たとえば、下の写真の地味〜〜〜な草は、ヤマネコノメソウといいますが、普通は山奥に生える草です。それがしれっと田んぼのあぜ道に生えていました。どうやら奈義はなかなかしっとりした土地柄だぞと、強く実感しました。

ヤマネコノメソウ。種ができている。

春には、色とりどりのスミレが当たり前のように咲き乱れていて、これまた感動!(スミレの話はまたじっくりとしようと思います) これも、乾燥しきった関東のあぜ道ではなかなか見られないことです。

ノジスミレ

これはきっと、那岐山から降りて来るこの濃い霧のせい? 聞けば奈義の夏はなかなか蒸し暑いとのこと… 実際、8月にお邪魔したら蒸し蒸ししていて、汗だくになり、もっと替えのシャツを持って来ればよかった!と後悔しました。この湿気が豊かな野草とコケを育てているのでしょう。いやいや、素晴らしい! 霧って素晴らしい! そう思って、いまだ那岐山が見えない悲しみを紛らわせていました。

 

そして、とうとう去年最後の奈義訪問。岡山から車に乗せてもらって向かう道すがら、どうもいつもと様子が違います。勝央町あたりで、スカッと抜けた青空。これはもしや… 山を越えて林を抜けると、パッと開けた視界には雄大な那岐山が一つの雲もなく横たわっていました。なんだか晴れ晴れとして穏やかで、いい山です。見える前からファンでしたが、これでもっと那岐山のファンになりました。


快晴の那岐山