フィードバック~基準の示し方~

6月20日、奈義中学校1年生を対象に、演劇的手法を用いたコミュニケーション教育の授業が行われました。会場は体育館で行いました。
今年の中学校1年生は、昨年度も小学校6年生として、学期に1回ずつ、コミュニケーション教育の授業を受けてきた生徒たちです。
昨年度の最後の授業が行われた1月末から5カ月ぶりの授業です。顔の様子はそんなに変わっていないようですが、制服が中学校のものへと変わっているので、やはり雰囲気は一味違います。

講師は昨年度も1学期に中1生に授業をしてくださった、わたなべなおこさん(NPO法人PAVLIC理事)。東京から日帰りで来てくださいました。

じゃんけんゲームで5回勝った人から座っていく、というワークからスタートしました。最後まで残った人たちへは「一番たくさんの人と会ったんだね」といった声掛け(フィードバック)が講師の先生からありました。
次に、1から50、という6~7人のグループを作って、1から50まで順番に一人ずつ数を数えていく、というワークをしました。案外途中で間違えてしまうことが多く、そんなに簡単ではなさそうです。ワーク後にすべてのグループに対して講師からのフィードバックが行われます。

この日のメインはジェスチャーゲームといって、グループごとに異なるお題を渡され、他のグループへは知らせずに、そのお題ををグループで黙って演じ、見ている人にわかってもらおうとするものです。
お題は卓球、花火大会、スイカ割、ジェットコースター、お化け屋敷、早押しクイズ等です。

体育館中に散って、それぞれ作戦会議から練習が始まります。今回は長い時間、すわったままでの意見交換が多いようでした。

いよいよ発表です。
少し恥ずかしさもありながらも、はっきりした表現になっています。聴く側も関心をもって集中しています。5カ月前とは随分と成長した姿です。

この発表の中で、2回講師から指導がありました。
ひとつめは、発表で演じている際に、頭を叩くというシーンがありました。本人たちは笑いながらしていますが、叩く音が響きますし、何のお題を表現しているのかがよくわからないので、見る側からすると困惑していました。
発表を終えて、お題の確認の際に、「何がしたいのかがわからない。人を叩いていじめているようにも見える。非常に不愉快な印象を持つ」との講師からのフィードバックがなされました。
もうひとつは、発表を終えてお題の確認をする際に、見る側からの回答に対して、発表者の多くが「正解。まる~」と答える中、一人が、「ちがう。×!」と答えました。このことについて、正解なのか不正解なのかを確認したのち(正解でした)に、「なぜそんなつまらないことをするのか?見て答えてくれてる人に対しても、一緒に発表している人に対しても失礼でしょう」とのフィードバックがありました。

ふたつの指導によって、一瞬静まり返りましたが、すぐに雰囲気は元に戻り、楽しく進んでいしましたし、指導を受けた生徒たちも、その後、見る側になってからも積極的に発言をしていました。

これらの指導については、その後の教員研修でも話題の一つとなりましたが、指導は行為に対してのものであることと、何が良くて何がいけないのかを明確にした価値基準にしたがったものであったことによって、生徒にとって後を引くものではなく、また判断の基準がより理解でき、行動につながりやすいものになったのではないかと考えます。

奈義町教育委員会としては再来年度には奈義町の先生方による演劇的手法を用いたコミュニケーション教育の授業を実施することを目指しているので、今年度は、先生方への理解を一層深める、という狙いもあります。
放課後には、それに向けた教員研修をおこないました。
授業を見ることができる先生は、その時間に自分の授業がない、一部の先生ですので、昨年度は生徒の様子を撮影し、それを見ながらの研修を行っていましたが、今年度は、授業のプログラムや生徒の様子を、参加した先生から、授業を見ていない先生へ伝え、それから情報交換をする、というスタイルで行いました。
これによって演劇的手法を用いたコミュニケーション教育への理解を深める狙いです。

今回は授業を見ていた先生から、特にフィードバックについての話題が多く、そのことについて意見交換が活発に行われました。生徒の観察をしっかりしておくことと、授業の狙いを明確に理解しておくことによって、適切な時に、的確な内容のフィードバックができる、という共通理解をえることができました。

次回は10月17日の予定です。

(黒瀬)